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紋章の怪物たちと共に過ごすうちに、アズヴァーンは召喚歌を歌うことを覚えた。
怪物たちのようには上手く歌えなかった。
召喚が成功するのは十回に一回あるかないかで、引っ張り出せる精気もほんの僅わずかだった。
怪物たちは、彼らの真似をして不器用に歌うアズヴァーンを滑稽がり、いい憂さ晴らしになっているようだった。
アズヴァーンはそれで満足だった。
そうやって繰り返し歌っているうちに、だんだん要領を得て、召喚できる精気の量が増えていった。
それだけではなく、召喚した精気を自分が考えた通りのものに創り変えられることにも気づいた。
それまでアズヴァーンを微笑ましく眺めていた紋章の怪物たちは、これに驚き、そして喜んだ。
アズヴァーンの力は光の子らと同じもののように思われたからだ。
光の子らはそのようにして紋章の怪物を創ったのだ。
怪物たちが定めを受けてこの世界に六種の精気を創り、世界にいろいろなものが増えていくと、まるでそれに相対するように光の子らの数は減っていった。
アズヴァーンが現れた頃には、久しく光の子らの姿を見かけなくなっていた。
怪物たちはひどく不安に駆られていた。
なにしろ、彼らに定められた役目は恐ろしく退屈だった。
定めを取り消して欲しいという思いが日毎ひごとに強まっているのに、それができる創造主はいなくなってしまったようだ。