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土の息子が冒険に出た後、水の息子も間もなく父の家を出た。
水の息子は火の息子の性質をよく知っていたので、ぐずぐずしてはいなかった。
火は周りにあるものを焼き尽くさずにはいられない。
彼と同じ家にいるのは危険極まりないことだ。
風の息子の二の舞になるつもりはない。
水の息子は風や土の息子とは逆へ向かった。
つまり、筏いかだに乗って川を下り、海へ出た。
沖へ向かって漕ぎ進むと、深い藍色の海流にぶつかり、筏はすごい速さで流され始めた。
三日目に嵐に遭遇し、筏は大波に揉まれて木っ端微塵になった。
水の息子は残った木切れにしがみつき、海流に乗ってひたすら走り続けた。
水の精気エレメントを受けて生まれた彼は、その気になれば身一つで水の上を歩き回ることもできる。
だが魔法を使うと体力を消耗するので、魚を捕まえる以外には極力使わないようにしていた。
そうまでして火の息子のいる土地から離れようとしたのは、彼にとって未来は分かりきったものだったからだ。
彼にとって時間は、一本の流れる川と同じようなものだった。
高い場所から流れ落ち、最も低い場所へ溜まるように。
いつか自分も火の息子に殺されるだろう、と予期したその時から、彼の心は一時も休まることがなかった。
この時間軸から逸脱しない限り。
別の未来へ移るには、別の陸地へ移るしかないと彼は考えていたのだ。