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それから数日後、三人の息子は、今度は風の息子を川へ釣りに誘った。
最初、風の息子は渋った。
兄たちと行動すると、いつもろくなことがない。
だが、火の息子が強引に言った。
「だめだ、来なくちゃいけない。舟を漕ぐのにお前の風の力がいるんだから」
それで風の息子は渋々兄たちに従い、四人の乗った筏舟を、風の力で川の真ん中辺りまで押し流してやった。
そこで突然背中を押され、風の息子は川に落っこちた。
彼は泳げなかったので、水の中を虚しくもがき、そして溺れた。
今度ばかりは、さすがのアズヴァーンも風の息子の姿がないことに気がついた。
彼がいなくなって三日ばかりも経っていた。
ヴォートはどうした、と父親が尋ねると、三人の息子は、知りません、と涼しい顔で答えた。
ヨギだけは、風の息子の行方を知っていた。
だが彼女は夫に黙っていた。
アズヴァーンとは違い、彼女は息子たちの昏くらい感情を知っていたからだ。
彼女は、風の息子が川で溺れたその日に、川岸に流れ着いた彼の屍体を見つけた。
息子の屍体の中に、まだこの世と繋がりのある一種の鎖のようなものがあるのを認め、それを辿って死の世界から息子を引き戻した。
蘇った息子に、彼女は言った。
「このままお逃げ。できるだけ遠くまで。お前の兄たちは、お前が生きている限り決して許さないだろうから」
風の息子は、母の助言に従い、その地を後にした。